技術情報
鍛造の種類について
鍛造は、ワークの加熱温度によって、熱間鍛造、冷間鍛造、温間鍛造の3つの種類に分けられます。それぞれのメリット、デメリットをご紹介します。
熱間鍛造とは
まず熱間鍛造とは、鉄鋼材料の場合、ワークを約1000~1250℃の再結晶温度以上に熱して行う鍛造方法です。「再結晶」とは、ある温度以上に加熱された鋼が柔らかくなり、歪んだ結晶が正常な結晶に変化する現象を指します。
冷間鍛造とは
一方、冷間鍛造とは、冷間圧造とも呼ばれ、再結晶温度以下の常温で成形する鍛造です。冷間鍛造では、金属を加熱せず、弾性限界を超える外的な力を与えることで、永久ひずみを起こして求める形状や寸法に加工します。
温間鍛造とは
温間鍛造とは、約300~850℃の温度でワークを加熱し、成形を行う鍛造方法です。熱間鍛造と冷間鍛造の両方の特長を併せ持つことで、互いの長所を生かし、短所を補うことが可能となります。
それぞれのメリット
熱間鍛造のメリット
1.成形の自由度が高い
金属を加熱して柔らかくなった状態で加工するため、複雑な形状や大型部品の成型をすることが可能です。冷間鍛造と比べ、成形の自由度は高くなります。
2.難加工材の鍛造ができる
工具鋼やチタン合金などの難加工材でも、加熱することで変形抵抗が低下し、成形を行うことができます。
冷間鍛造のメリット
1.寸法精度が高い
常温にて成形するため、高い寸法精度が得られます。切削加工と同様の高い精度が狙えるのと同時に、後工程での加工量が少なくなるため、加工費の低減に寄与します。
2.表面の仕上がりが良好
熱間鍛造と比べ、表面の仕上がりがよく、また生産速度が速いため、大量生産に向いています。
温間鍛造のメリット
熱間鍛造と冷間鍛造の両方の特徴を併せ持つ鍛造方法です。冷間鍛造では成形できない複雑な形状の製品や、熱間鍛造では得られない高精度の鍛造品を製作することが可能です。
それぞれの特徴をまとめたものが下記になります。
| 熱間鍛造 | 温間鍛造 | 冷間鍛造 |
鍛造温度 | 材料を再結晶温度以上の温度帯に加熱して行う鍛造 1000°C ~1250°C | 熱間鍛造と冷間鍛造との中間の温度範囲で行う鍛造 300°C~850°C | 常温で行う鍛造 |
寸法精度 | ±0.5mm~ | ±0.05mm~ | ±0.025mm~ |
前処理 | 不要 | 不要 | 焼なまし・球状化など |
変形抵抗 | 小 | 中 | 大 |
金型費 | 低 | 高 | 高 |
製品サイズ | 小物・大物 | 小物 | 小物 |
形状 | 複雑 | 一部複雑 | 単純 |
ロット数量 | 小ロット~大ロット | 中ロット~大ロット | 大ロット |
実際の製品事例①
こちらは、大型の減速機に使用される歯車部品(ピニオン)です。通常、写真の様な形状の歯車は丸棒の切断材を素材として、歯の切削加工を行いますが、あらかじめ型打鍛造で歯を成形しておくことで、歯の切削加工時間を約3分の1にまで短縮することができ、コストの大幅な削減が実現できます。
実際の製品事例②
こちらは、船舶用ディーゼルエンジンのコンロッドの大端部です。
従来別メーカーでコンロッド一体形状で鍛造されていたものを分割で鍛造することによりコストダウンを実現することができました。
また、船級受検が可能で大型の型打鍛造品を製造できるメーカーは国内でも限られています。
実際の製品事例③
こちらは、ゴム風船を膨らませることで水を堰き止めるファブリダムのクランプ部品です。河川の下流においては逆流による塩害防止のため、上流においては貯水ダムを作るためにこのダムが建設されます。この部品を異形圧延で製作する場合、一度に大量の素材が出来上がる一方で、型打鍛造の場合小ロットでも対応が出来るため、型打鍛造が採用されました。アンカーボルトが通る穴を機械加工で空ける以外は無加工で使用されます。
鍛造なら熱間鍛造技術ナビにお任せ下さい!
今回は鍛造の種類についてご紹介しました。熱間鍛造技術ナビを運営する山崎機械製作所では、型打鍛造品の提供を行っています。
当社では大型の鍛造設備のみならず、小型の鍛造設備も保有することで、鍛造可能重量は1㎏から1,300㎏という国内随一の範囲を誇り、月産2,500t、500アイテムを超える生産能力を有します。巣(鋳巣)による品質問題や機械加工時間の短縮などのコスト課題を抱えた製品も、業界最大級の当社なら解決に導くことができます。
幅広い対応力を活かし、建設機械、船舶、鉄道車両、ロボット、工作機械など様々な業界に鍛造品を提供しています。
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